コロナウイルスによる経済的な打撃が大きい中、注目を集めているのがネットショップです。
ECへの移行を検討している企業だけでなく個人でネットショップを開業しようとお考えの方も少なくないかと思いますが、やはり開業にあたって必要な資金は気になる所ではないでしょうか。
そこで今回は、ネットショップ開業に必要な3つの資金について解説したうえ、それぞれの費用内訳まで徹底解説します。
必要な資金について金額や内容を知ることは開業において非常に重要ですので、ネットショップ開業を検討中の方はぜひ今回の記事を参考にしてくださいね。
<目次リストを追加する領域>
開業資金はいくら必要?ネットショップ開業には何に費用がかかる?
ネットショップ開業には、大きく分けて以下の3つの資金が必要になります。
- 作成資金
- 運転資金
- 仕入れ資金
以下でそれぞれの資金について詳しく解説しますが、必要な開業資金はショップの規模やサイトの作成方法によって多く異なります。
そのためここではまずネットショップ開業に「何が必要なのか」を確認し、それぞれ「いくら必要なのか」といった内訳費用については後ほど「ネットショップ開設のための資金内訳」で解説します。
作成資金
作成資金とは、ネットショップ開設時にはじめに支払う必要がある資金です。
具体的な費用としては、以下のようなものがあげられます。
-
ウェブサイト作成費
-
業許可申請費
-
商標登録費
-
機材・設備費
カートや決済、顧客管理などのEC機能を有したネットショップを作成するための資金はもちろん、営業許可申請や商標登録など行政関係の手続きに必要な資金も作成資金にあたります。
またネットショップを作成するために不可欠なパソコンや商品撮影に必要なカメラ、また商品発送に必要な梱包資材など、機材や設備にかかる費用も作成資金と言えます。
運転資金
運転資金とは、ネットショップを運営していくにあたり継続的に必要となる資金です。
具体的な費用としては、以下のようなものがあげられます。
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ドメイン・サーバー費
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宣伝広告費
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オフィス・倉庫費
-
人件費
-
ネット・電話・FAX回線費
ネットショップ運営にかかる費用としてはドメイン・サーバー費のほか、ネットをはじめとした回線費があげられます。
ネットショップの規模によってはオフィスや倉庫にかかる賃料や、人件費も必要となるでしょう。
また数あるネットショップの中で生き抜くためには、宣伝広告費も必要と考えておくべきと言えます。
仕入れ資金
仕入れ資金とは、ネットショップで販売する商品を仕入れるための資金です。
具体的な費用としては、以下のようなものがあげられます。
-
仕入れ費
-
商品生産費
仕入れ資金という名の通り、商品をどこかから仕入れて販売する際には当然仕入れ費がかかります。
また自社商品を取り扱う場合や個人で商品を生産する場合も費用は発生します。
仕入れ資金をしっかりと把握することはネットショップを開業するにあたっても運用するにあたっても重要なポイントの1つと言えるため、可能な限りどの程度必要になるか算出するようにしましょう。
ネットショップ開業のための資金内訳
ネットショップ開業に必要な資金について何が必要なのかを確認したところで、それぞれの具体的な費用について1つずつ詳しく見ていきましょう。
それぞれ必要な費用感について確認することで、現実的なネットショップの規模やどこに費用をかけるかなど、ネットショップ開業の方針を決める手がかりとすることができます。
作成資金の内訳
作成資金は、ネットショップ開業における初期費用と言えます。
作成資金の費目と参考費用は以下の通りです。
費目 | 参考費用 |
ウェブサイト作成費 | 10万円程度~数千万円程度 |
営業許可申請費 | 10,000円程度~ |
商標登録費 | 40,000円程度~ |
機材・設備費 | 数千円程度~ |
ウェブサイト作成費
ウェブサイト作成費とは、ネットショップ(ECサイト)の作成に必要な費用です。
ウェブサイトは言うまでもなくネットショップ開業において基盤となるため非常に重要なポイントですが、以下のように作成方法によって大きく必要な費用が異なります。
作成方法 | 費用目安 | 参考年商規模 |
ECモール | 10万円程度 | - |
カートASP | 10万円~100万円程度 | ~1億円未満 |
オープンソース | 数十万円~500万円程度 | 1億円~ |
パッケージ | 500万円程度~ | 1億円~ |
フルスクラッチ | 数千万円程度~ | 数十億円~ |
費用を抑えられる方法としては、「Amazon」や「楽天市場」などのECモールに出店するECモール型や「BASE」や「カラーミーショップ」などの既存ECサイトシステムを利用して自社サイトを作成するカートASP型があげられます。
これらの方法は費用を抑えられる一方、既存のシステムに参入または利用する構造上どうしてもデザイン性や拡張性に制限があります。
この点「EC-CUBE」などのネット上に公開されている無料プログラムソースを利用して自社サイトを作成するオープンソース型ではそのような制限はありませんが、安全性を確保しながらそれらの性能を発揮するためには高度な知識が必要となります。
デザイン性や拡張性、安全性を確保した高品質なウェブサイトを作成する方法としては、「ecbeing」や「EC-ORANGE」などのECサイトシステムを購入して自社サイトを作成するパッケージ型やゼロから自社サイト作成を依頼するフルスクラッチ型があります。
ただし表にあるように非常に高額であるほか、フルスクラッチ型の場合はサイト開設にも時間がかかる点に注意が必要です。
ネットショップ開業の要となるウェブサイト作成費ですが、ネットショップの規模や方針に合わせて最適の作成方法を選択することが重要です。
詳しくは「ネットショップ作成依頼の費用相場は?見積り料金の内訳を解説」をご覧ください。
[補足]
これらの他にもCMSのフリープラグインを利用したりASP型のフリープランを利用したりすることによって0円でネットショップを作成することは可能です。
ただしユーザーから信頼され使用されるネットショップとなるためにはある程度の機能性や安全性が求められるため、今回は一覧から外しています。
営業許可申請費
営業許可申請費とは、特定の商品を販売する際に必要な許可を申請する際にかかる費用です。
取り扱う商品やサービスによって、以下のように必要な許可や費用が異なります。
基本的には取得時のみ費用が必要で更新は不要ですが、許可の種類や申請先の自治体によっては有効期限や更新が必要な場合がある点には注意が必要です。
販売商品・サービス | 必要許可・資格など | 費用目安 |
中古品売買 | 古物商許可申請 | 20,000円程度 |
食品 | 食品衛生法に基づく営業許可 | 10,000~20,000円程度 |
健康食品 | 食品衛生責任者程度 | 10,000円程度 |
酒類 | 通信販売酒類小売業免許 | 30,000円程度 |
これらのほかにも医薬品を取り扱う場合は医療品販売許可が必要であったり、化粧品を取り扱う場合は化粧品製造販売許可が必要であったりと、販売する商品やサービスによって細かく許可申請が求められています。
ご自身が取り扱うものにどのような営業許可が必要なのか、ネットショップを開業する前に必ず確認・申請するようにしましょう。
商標登録費
商標登録費は、商品名や商品ロゴ、商品ブランドといった商標の登録にかかる費用です。
商標登録費には以下のように「出願料」と「登録料」が必要です。
費目 | 費用 |
出願料 | 3,400円+(8,600円×区分数) |
登録料 | 28,200円×区分数 |
【参考】特許庁 初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~
外部から商品を仕入れる際は必要ありませんが、自社商品を取り扱う、自身のブランドを立ち上げる際はしっかりと商標登録を行うことで勝手に商標を使用されるリスクを抑えることができます。
絶対に必要なものではありませんが、特に信頼性が重要となるネットショップにおいては模倣品による損失などを避けるために商標登録しておくことが賢明と言えるでしょう。
機材・設備費
機材・設備費とは、ウェブサイトの運営に必要なパソコンや商品撮影に必要な撮影機材などにかかる費用です。
これらのほかにも各種書類出力に必要なプリンターや商品発送に必要な梱包資材なども機材・設備費にあたります。
具体的な機材・設備とそれぞれの費用感については以下の通りです。
機材・設備 | 費用目安 |
パソコン |
ノートパソコン:40,000~200,000円程度 デスクトップパソコン:100,000~300,000円程度 |
撮影機材 |
一眼レフ:30,000円程度~ コンパクトデジタルカメラ:10,000~30,000円程度 |
プリンター |
10,000円程度 |
梱包資材 |
配送数、使用資材による |
上記のうち、パソコンやカメラ、プリンターに関しては既に所有しているものがあれば費用はかかりません。
ネットショップの規模にもよりますが、最近のパソコンやスマートフォンのカメラ性能を考えると小規模であれば十分に対応できるでしょう。
ただし商品撮影もネットショップにおいて重要なポイントとなるため、その点を強化したい場合は三脚や撮影ライト、レフ版なども別途必要になります。
運転資金の内訳
運転資金は、ネットショップ運営におけるランニングコストと言えます。
作成資金の費目と参考費用は以下の通りです。
費目 | 費用目安 |
ドメイン・サーバー費 |
2,000円程度/月 |
宣伝広告費 |
広告による |
オフィス・倉庫費 |
場所・規模による |
人件費 |
雇用方法・人数による |
ネット・電話・FAX回線費 |
インターネット回線費:4,000円程度/月 電話回線費:3,000円程度/月 FAX回線費:1,000円程度/月 |
ドメイン・サーバー費
ドメイン・サーバー費とは、ドメインやサーバーの取得にかかる費用です。
サーバーは基本的にネットショップはじめウェブサイトを運用する上で必要なものであり、ドメインは取得することにより独自のURLを設定することができます。
それぞれの費用感としては以下の通りです。
費目 | 参考費用 |
ドメイン取得費 |
1,000円程度/年 |
サーバー取得費 |
1,000~3,000円程度/月 |
宣伝広告費
宣伝広告費とは、ネットショップを宣伝するための広告にかかる費用です。
ネットショップ宣伝となるWeb広告の種類と費用感は以下の通りです。
広告の種類 | 参考費用 |
リスティング広告 |
1円~数千円程度/クリック |
アフィリエイト広告 |
50円程度~/クリック |
記事広告 |
20~200円程度×想定PV数 |
これらの広告の他にも特定のサイトの広告枠を購入して一定期間表示する純広告や、YouTubeやSNSを活用した広告も存在します。
Web広告は表に見られるように閲覧数に応じて課金される仕組みのものも多いため、数あるネットショップの中からユーザーに認知されて選ばれるショップとなるためにも広告を検討してみると良いでしょう。
オフィス・倉庫費
オフィス・倉庫費とはネットショップ運営のために必要なオフィスや在庫を保管するために必要な倉庫の賃料としてかかる費用ですが、オフィス・倉庫費は場所や規模によって異なります。
小規模のネットショップであればパソコンとネット環境があれば自宅で始めることも可能ですが、規模に応じてオフィスや倉庫が必要となることも十分に考えられます。
またオフィスを持つことで、ネットショップで事業者の所在を明らかにする場合に自宅の場所を公開せずに済みます。
人件費
人件費とはネットショップ運営に際して人を雇った際にかかる費用ですが、人件費は雇用方法や雇用数によって異なります。
ネットショップ運営は商品撮影や商品ページの作成や顧客対応やウェブサイトのメンテナンスなど必要な業務が多数存在するため、ネットショップの規模によっては人員を雇う必要がある場合もあるでしょう。
社員として継続的に雇用する方法もありますが、フリーランスなどに依頼することで必要に応じてスポット的に人員を雇うことも可能です。
ネット・電話・FAX回線費
ネット・電話・FAX回線費とは、インターネットや電話、FAX利用に必要な回線にかかる費用です。
それぞれの費用感は以下の通りです。
費目 | 参考費用 |
インターネット回線費用 |
4,000円程度/月 |
電話回線費用 |
3,000円程度/月 |
FAX回線費用 |
1,000円程度/月 |
ネットショップを運営する上でインターネット回線は必須ですが、電話やFAXに関しては顧客とのやり取りをメールなどに絞ることで削減できます。
ただしオフィスと同様に、ネットショップの信頼性を確保しつつ個人情報を公開したくない場合はショップ用の電話を用意すると良いでしょう。
仕入れ資金の内訳
仕入れ資金は、初期投資としてもランニングコストとしてもかかる費用と言えます。
外部から商品を仕入れる際は仕入れ費がかかり、自社商品を取り扱う際や個人で商品を生産する場合は商品生産費がかかります。
いずれも商品の質や量、生産性によって必要な資金は異なります。
ネットショップ開業にあると便利なソフトウェア
最後にネットショップ開業に必要、またはあると便利なソフトウェアを3つご紹介します。
- 画像編集ソフト
- ウイルス対策ソフト
- 会計ソフト
画像編集ソフト
画像編集ソフトとは、ネットショップで使用する商品画像やバナー、ボタンなどの画像を作成・編集する際に使用するソフトウェアです。
画像編集ソフトの例としては「GIMP」などのフリーソフトの他、プロ仕様の高度な編集が可能なPhotoshopなどがあげられます。
なお、Photoshopは月額1,000 円程度で利用できます。
必ずしも必要なわけではありませんが、画像編集ソフトを利用して画像を作成することで商品をより魅力的に見せられるだけでなくショップの独自性を出すことも可能です。
ウイルス対策ソフト
ウイルス対策ソフトとは、主にネットワークを通じて侵入するウイルスをブロックし情報を守るソフトウェアです。
ウイルス対策ソフトの例としては「ノートン」や「ウイルスバスター」などがあげられます。(いずれも年間5,000円程度~)
ネットショップは顧客情報を取り扱うため安全性や信頼性が非常に重要です。
このため、ウイルス対策ソフトは必要不可欠と言えるでしょう。
会計ソフト
会計ソフトとは、決算書や確定申告書を作成する際に使用するソフトウェアです。
会計ソフトの例としては、「freee」や「弥生会計」などがあげられます。
(無料~40,000円程度)
Excelなどでも会計管理は可能ですが、会計ソフトを導入することで効率的に会計業務を行うことが可能です。
まとめ
今回はネットショップ開業資金について解説しました。
ここでもう一度内容についておさらいしておきましょう。
ネットショップ開業に必要な資金は以下の3つです。
-
作成資金
-
運転資金
-
仕入れ資金
それぞれの内訳と費用感は以下の通りです。
【作成資金の内訳】 | |
費目 | 参考費用 |
ウェブサイト作成費 |
10万円程度~数千万円程度 |
営業許可申請費 |
10,000円程度~ |
商標登録費 |
40,000円程度~ |
機材・設備費 |
数千円程度~ |
【運転資金の内訳】 | |
費目 | 参考費用 |
ドメイン・サーバー費 |
2,000円程度/月 |
宣伝広告費 |
広告による |
オフィス・倉庫費 |
場所・規模による |
人件費 |
雇用方法・人数による |
ネット・電話・FAX回線費 |
インターネット回線費:4,000円程度/月 電話回線費:3,000円程度/月 FAX回線費:1,000円程度/月 |
【仕入れ資金の内訳】 | |
費目 | 参考費用 |
仕入れ費 |
質、量、生産性による |
商品生産費 |
質、量、生産性による |
また、ネットショップ開業にあると便利なソフトウェアは以下の3つです。
- 画像編集ソフト
- ウイルス対策ソフト
- 会計ソフト
ネットショップ開業には様々な資金・費用が必要となりますが、削れる部分は削ったり依頼できる分は依頼したりと、事業規模やコンセプト、資金に応じて予算を考えることが重要です。
もちろん資金は多ければ多いほどできることは増えるため、補助金の活用を検討することも1つでしょう。
ネットショップ開業や作成時に利用できる補助金については「ネットショップ開業や作成に関する補助金まとめ2021年」も合わせてご覧ください。