情報過多の現代では、無意識に多くの情報の中から取捨選択をしています。目に止めてもらえる情報や、興味を持ってもらえる情報は、現実にはほんのひと握り。人を惹きつけるインパクトのある言葉選びやデザインのテイストを提示できなければ、その情報はあっという間に埋もれてしまいます。
これまで、自分たちが手がけた商品やサービス、運営するお店やイベントなどを宣伝したくても、全く宣伝効果が現れずにもどかしく感じたことはありませんか。まずは、企業やお店、自分たちの思いやこだわり、商品の良さなどは言語化して伝える必要があります。そこで、最も重要となるのが「キャッチコピー」の存在です。
「キャッチコピー」とは、企業でいえば企業理念、お店でいえばコンセプトを、消費者に向けて一瞬で伝わるインパクトのある短い文章で表現したもの。身近な存在でいうと、テレビCMや新聞広告、ポスターや商品のパッケージなどに、大きく目立つ文字とインパクトのある言葉で、ひと言で表現すると何?を言語化した宣伝文句です。
キャッチコピーを書く人を「コピーライター」といい、以前から存在する職業なだけにキャッチコピーの重要度の高さが伺え、ベテランのコピーライターならば、1つのコピーで数十万から数百万を稼ぐともいわれます。しかし、一般の人でもキャッチコピーの基礎を理解すれば、インパクトのある伝わりやすい言葉選びや言語化が可能になるのです。
一瞬で相手の心に響く印象的なキャッチコピー。この記事では、初心者でも理解できる「キャッチコピーの考え方と作り方(基礎編)」をお届けします。
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人が行動する時、それは何かしらの「欲求」に基づいている
お客様が購買意欲をかき立てたり、実店舗に出向いたりと行動を起こす時、それは何かしらの「欲求」に基づいています。幸福、不安、損得勘定、自己実現、課題解決など、そのときの感情に突き動かされて、何かしらの理由を伴って行動を起こすのです。ポジティブとネガティブの両極面から抱いた感情によって「自分ごと化」していくわけです。
行動してもらうためには、それを誘発する要因が必要。「キャッチコピー」はその大きな役割を担っています。どのような言葉選びをして、どのような表現で伝えたら、お客様が「自分ごと化」できるのかを、どうイメージしていけるのがひとつの鍵です。
いくつか事例を挙げると、継続的にキャッチコピーを更新している有名な広告が、ルミネの広告、JRの「青春18きっぷ」や「JR SKI SKI」のポスターです。この広告を見ていると、不思議とショッピングや旅へ出かけたい気分に。現在までに数多くのキャッチコピーが作られ、これらを比較するだけでも参考になります。
「惹きの強さ、印象の深さ、興味・関心の高さ」などをキャッチコピーから引き出せると、購買意欲や実行動へと繋がる確率が上がり、自分たちの商品やサービスの良さ、自分たちの活動や思いなどを言語化できるチカラを持てば、それを一生ものの武器として活用できるのです。
今の時代でいえば、SNSでシェアしたくなる記事のタイトルとか、身近なところにもヒントは隠れています。情報量の増加に伴い、情報を取捨選択する必要性が出てきた今の時代に、一瞬でパッと目を引く強いインパクトのある「キャッチコピー」は、とても重要であり、顔や看板となる入口にもなるのです。
絶対にブレるな!最も重要な「コンセプト」の考え方
人を惹きつけるキャッチコピーをいかに作れるか。それを可能にするのは、まずブレない軸となるコンセプトが必要です。コンセプトとは、全体的な構想の骨格となる概念のこと。商品やサービス、お店や企業理念など、伝わりやすく一貫した深みのあるコンセプトを打ち出せると、大勢に共有しやすい分、その後の活動やスタイルにもブレが生じにくくなります。
まずは、他にはない強みや独自性を探り、それらをマインドマップのように書き出して、いくつかのテーマに分類していきます。そのテーマを例えば、「○×○×○」と3つのテーマで掛け合わせることで、さらに独自性を発揮したポジショニング(あるカテゴリで1位になること)が可能になります。主観を一旦退けて客観的な視点で冷静に探っていき、外部の人にリサーチするのも効果的。違う角度から見た第三者目線の意見は大変参考になるのと、時として変革的な進化をもたらします。
次に、いくつかのテーマを掛け合わせた強みがどのような客層に響くのかを考え、いわゆる「ペルソナ設定」をします。性別、年齢層、職種、居住地、ライフスタイル、趣味・嗜好など、ターゲットの属性を絞っていきます。また、「6W3H」で細かく内容を落とし込んで分析しすると、一連のストーリーをイメージしやすくなります。
「6W3H」とは、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、Whom(誰に)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)、How much(いくら)、How many(いくつ)のこと。
その後、そのターゲット層がどのような感情を抱くのかを想像した上で、その先にある課題解決や自己実現などの欲求に対して、バリュー(価値)やベネフィット(利益)をどう提供していけるのかを考えて、最終的な満足度(ストーリー)までを想定していきます。
- テーマを掛け合わせた強み(差別化)
- ターゲット層を絞り込む(ペルソナ設定)
- 6W3Hで内容を落とし込んで分析
- ターゲットの感情や欲求を掘り下げる
- ターゲットにバリュー(価値)を提供
- ターゲットにベネフィット(利益)を提供
- 最終的な満足度(ストーリー)を想定
細かく書き出して分析すると、ターゲットが体感するであろう一連のストーリーや重要な基盤となるブレない軸や強みが見えてくると思います。そこから顧客の感情に訴えかけるような構成と伝わる言葉で、ありきたりではないオンリーワンを目指してコンセプトを言語化していきます。
もちろん、そこにはオーバーな表現や嘘があってはなりません。後々、信用問題にも繋がるため、自分語りのような強い自己解釈に留まるのを防ぐために、第三者にリサーチをかけることも忘れずに。
コンセプトを短い言葉に置き換えて「キャッチコピー」を考える
出来上がったコンセプトをもとに、さらに短い言葉に置き換えて一瞬で心に響く「キャッチコピー」へと進化させていきます。
キャッチコピーを考える際は「一瞬で響く言葉」になっているかどうか、が重要な鍵となります。多くの情報の中からそのキャッチコピーを見つけてもらう、目を止めてもらうには、一瞬で何かしらの強烈な感情を抱くインパクトが必要になるのです。
キャッチコピーを考える上で、いくつかロジック的なコツを挙げておきます。
- 数字を入れて説得力を上げる(訴求力)
- 言葉の掛け合わせで造語を作る(ストーリー)
- 「、」や「。」を効果的に使う(余白を残す)
- 漢字、カタカナを効果的に使う(語呂感)
- オリジナルの言葉を打ち出す(独自性・個性)
- 重要かつ伝わるキーワードの選定(強み・差別化)
- 複数の類語を書き出して比較する(言葉選び)
- 漢字、カナ、ひらがなのバランス(心地良さ)
- 2行以上、文字数のバランスを調整(配置)
- 対義語や疑問符・感嘆符を効果的に使う
例えばですが、複数の類語を並べて、言葉と言葉を繋ぎ合わせた時の相性を比較したり、漢字・ひらがな・カタカナのバランスが心地よく配置されているかを見たり、数多くの言葉を書き出して、それらの言葉を足し算、引き算、掛け算、割り算しながら、さまざまなパターンで言葉を紡いでいきます。
一瞬で意味が伝わりやすく、その世界観を想像しやすい表現が理想的ではありますが、「違和感や意表を突く」などネガティブな感情で気を引く作戦もキャッチコピーならではの活用方法です。
大切なのは、多くの情報の中でも埋もれない存在感を放つこと。何十パターンものキャッチコピーを作って、並べて比較して、パズルを組み合わせるように一部の言葉を入れ替えて繋げて。自分のイメージに最も合う世界観のキャッチコピーを作り出してください。
初心者でも作りやすいキャッチコピー!王道の3パターンを紹介
誰しもが、未だに記憶に残る印象深い言葉があると思います。鮮明に脳裏に焼きついて、なぜか、いつまでも忘れずに覚えている。それは何かしらの理由によって、自分の感情が大きく揺れ動くほど心に浸透する言葉だったから。一瞬で相手の心を鷲掴みにする「キャッチコピー」もまた同じような存在なのかもしれません。初心者でも作りやすいキャッチコピー王道の3パターン紹介します。
1.「共感」を誘うキャッチコピー
よく見かけるのが「あるある系」です。過去の実体験を通して「それわかる。あるある!」と共感したキャッチコピーをキッカケに、過去の出来事を思い出してノスタルジーに浸ってしまう。今の自分と似た境遇や同じ悩みを持つ人たちへの課題解決、自分の言いたかったことを言語化してくれたキャッチコピーには、気分スッキリな爽快感や不安解消の安心感から「共感」が生まれやすいのです。
自分の幸福度やその先のストーリーが見える心地よさへの共感。自己実現をイメージできるような勇気を持てるワンステップ踏み込んだ共感。リアルな本音が見える、心の弱さが見える、裏側の苦悩が見える、と人の顔が見えるような共感。そこにある種の個人的な感情が動かされて、自分ごと化していくのです。
また、自分ごと化できるような語りかけのキャッチコピーを見ると、人は誰かに伝えたくなります。共感からSNSのシェアに自然と繋がっていくことも。一般的には「共感を誘うキャッチコピー」は永久保存版。オーソドックスなひとつの型として今後も使われていくでしょう。
2.「逆説」や「発想の転換」から驚きを生むキャッチコピー
逆説とは、反対のことを言ってるようで実は真理をついていて、「裏の裏は表」のように一時的に錯覚を起こすような表現でもあります。人の裏をかいたり、意表を突く発想の転換から目が点になるような驚きを生むキャッチコピー。
いい意味での裏切り感と意外性を感じて「これはやられた!」と笑みが溢れるようなわくわくする感覚が新しい発見をもたらし、面白さや斬新さでその世界観を表現していると不思議な感覚の興味をそそります。いわゆる「バズ」を生む確率の高いキャッチコピー。世の中をあっと言わせる今まで考えもしなかった驚きの視点が称賛に値する斬新なキャッチコピーといえます。
参考事例:近畿大学(広告アーカイブ 2015年)
3.「違和感」から負の感情を抱くキャッチコピー
一般的に「違和感」といえば、ネガティブな感情をイメージすると思います。いつも通りではない、普段とは異なる感覚や印象を受けると、違和感を感じたりするものです。
見過ごせない違和感を覚えたとき、一瞬だけ考えたり、立ち止まったりします。その「違和感」をあえてキャッチコピーに盛り込むことで、目に止まらせて考えさせ、その先を想像させるチカラまでを持っています。
何となく気になる不思議な感覚の違和感。何を言いたいのかが全く伝わらない違和感。日常生活の中で当たり前のことが覆されるような違和感。不安を煽るようなネガティブな言葉や怒りの感情を引き出すキャッチコピーまで。但し、怒りの感情は、やりすぎると炎上に至ることもあるため、注意が必要です。
「疑う・不安・危険」などネガティブな感情を抱く違和感から、ポジティブな感情を抱く違和感もまた存在すると感じていて、嬉しい誤算のような「嬉しい違和感」を表現することもできます。例えばですが、普段は一切家事を手伝わない旦那が急に家事を手伝うようになった違和感、とか。その裏側の背景に「Why?(なぜ)」と違和感を感じてストーリーを追いたくなるのです。
参考事例:文の里商店街(2013年ポスター全集)
さいごに
ホームページを作る際、デザインはもちろん、キャッチコピーは重要な要素になってきます。一瞬で心を鷲掴みにするような「キャッチコピー」を掲載し、トライアンドエラーを繰り返して様子を見ならが、コンバージョン(成果)へと繋げていきましょう。
文/OKINAWA GRIT 代表 みやねえ
Twitter:https://twitter.com/miya_nee3
ブログ:https://miya-nee.com/
埼玉出身、沖縄移住組。二拠点で活動する、企画とコラボ好きなライター・編集者。コミュニティの運営、Webメディアの編集長やディレクターなども務める。2015年からWebライター育成講座を企画・運営。2019年9月、沖縄のライター・編集者チーム「OKINAWA GRIT(オキナワグリット)」を立ち上げ、法人化した。