いきなりデザインソフトを開いても、プロのデザイナーでなければ、どのようにデザインをすればいいのかわからなくなるものです。デザインのアイデアは、パソコンの画面をじっと見つめるだけでは湧き出てきません。
そこで今回は、デザイン初心者でもすぐに実践できる、イマジネーションあふれるアイデアを生み出すためにやっておきたい17の方法をご紹介します。
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01. 専門誌を購読する
デザインは「センス」だけで片付けられない部分があります。そのため、デザイントレンドや最新の情報をチェックしたり、さまざまなクリエイターの考え方に触れたりすることは大切です。これらの情報はインターネットのほか、月刊や季刊で刊行されている専門誌をチェックすることで学べます。
デザイン・イラスト・Web・紙媒体など、幅広い分野で構成されている「MdN」という雑誌や、レイアウトを総合的に学ぶことができる「デザインノート」、毎月特定のデザイナーの特集を組んでいる「idea アイデア」などは、多くの書店で手に入れることができます。また、宣伝会議が発行している「ブレーン」は、クリエイティブ面だけでなくマーケティング面でも勉強になることが多いでしょう。
お気に入りの専門誌が見つかったら、毎月自動的に新しいアイデアが自分のもとにやってくる、定期購読がオススメです。Webだけでは手に入らないイマジネーションあふれるアイデアも生まれることがあるので、まずは書店の店頭で雑誌を開いてみることからはじめてみてはいかかでしょうか。
02. カラーパレットを探す
配色からデザインアイデアの着想を得ることもあります。配色を入れ替えるだけでもガラッとデザインから受ける印象が変わってしまうほど、配色はデザインにおいて重要な部分を占めているのです。
カラーパレットを生成したり保存したりするのには、Webサービスが役立ちます。
たとえばCoolorsでは、他のユーザーが作成したカラーパレットを閲覧することができます。スマートフォンのアプリやAdobe Photoshopなどと連携したりすることもできるので、気になるパレットを持ち歩いたり実用的な利用も可能です。
また、Khromaは自分の好きな色を50色選ぶことで、AI(人工知能)がユーザーの好みに合った色を提案してくれます。
色使いを使いこなすことができれば、アイデアの着想もきっと早くなるはずです。カラーパレットを使いこなして、斬新なアイデアを生み出しましょう。
03.プロダクトデザインを研究する
普段グラフィックデザインやWebデザインなどを行なっている場合でも、優れたプロダクトデザインに触れることで新たなアイデアの萌芽を見ることがあります。
プロダクトデザインを研究すれば、余白や色使いが上達します。優れたプロダクトデザインを探すのに役立つのが、Good Design Awardです。1957年以来、開催されているコンテストで、国内外の優れたデザインに対して賞が贈られています。イマジネーションを刺激するのにぴったりのコンテストなので、チェックしてみてください。
他にも、ネットショップや近所の文具店などで売れている「売れ筋」商品を研究することで、自分のアイデアのこやしにすることもできるでしょう。アイデアのタネは、意外と身近なところに転がっているものです。
04. オシャレなフォントを探す
デザインと切っても切れない関係にあるのが、フォントです。書体を一部入れ替えるだけでも、大きく印象が変わってきます。フォントのストックが多ければ多いほど、デザイン上の選択肢は多くなります。それだけ、フォントはデザインの生命線になっていると言っても過言ではありません。
最近では、テクノロジーのおかげでフォント探しに便利なツールも登場しました。たとえば、スマートフォンアプリの「Adobe Capture CC」では、気になるフォントをスマートフォンのカメラで撮影するだけで視覚的に似たフォントを検索することが可能です。
同じフォントでも、太さや斜字体などで印象もガラッと変わってしまいます。日頃から、使えそうなフォントのストックを行なっておきましょう。
05. デザインの原則を学ぶ
感覚的に行なっているデザインにも、原則は存在します。こうした原則を確認し、忠実に守ることによって、デザインの種子が花開くこともあります。
デザインの原則には、「近接」「整列」「強弱」「反復」といったデザインにおける王道の原則の他にも、「黄金比」「ヒックの法則」「フィボナッチ数列」など、デザイナーとして学んでおきたいさまざまな法則が存在します。こうしたルールは、美しく魅せるためのデザインの基礎となるので、学んでおいて損はないでしょう。
06. スケッチブックに絵を描いてみる
ピカソやゴッホのような画家、ヘミングウェイのような文豪、またチャトウィンのような思想家は、黒い表紙にゴムバンドのついた小さなノートブックを愛用していたといいます。MOLESKINE(モレスキン)と呼ばれるそのノートは、1997年にミラノの小さな出版社が復刻版を制作し、今日まで世界中の人々に愛用されています。このノートはスケッチブックとしても活用できます。
ふと頭に浮かんだイメージが消える前に、MOLESKINEのようなスケッチブックに書き留めておきましょう。アイデアが思い浮かばなくても、鉛筆を走らせることでインスピレーションに出会うこともあります。
大切なことは、偉大な歴史的人物と同じように、いつも肌身離さずノートブックやスケッチブックを持ち歩くことです。そうすれば、数え切れないページの中から、優れたアイデアが見つかるはずです。
07. フィードバックをもらう
いままでにいくつかの作品を生み出したのであれば、周りの同僚・上司や取引先などの関係者から、フィードバックやアドバイスをもらうのも有効です。
デザインは、場合によっては「職人芸」になりがちで、制作者の器量に左右されると思われがちです。確かに、作品はデザイナーのスキルやセンスに依存する面もありますが、客観的な意見を求めて、偏りすぎた作品にしないことも重要です。
また、フィードバックをもらうことで、「お客様」がどのように受け止めるかの参考にすることもできます。さまざまな身の回りの人を巻き込んで、アイデアを膨らませてみましょう。
08. ブレインストーミングを行う
デザインのアイデアが思い浮かばないのは、同じような思考回路を堂々巡りしているからかもしれません。発想の範囲を広げるには、ブレインストーミングを行うのもオススメです。
ブレインストーミングの方法論にはいくつかありますが、中でもマインドマップを使ったものは、一人でもできて手軽に始めることができます。「MindNode」のようなスマートフォンアプリを使えば、クラウド上でデータを共有し、パソコンでも閲覧・編集することができます。
また、デザインチームがいる場合には、「KJ法」と呼ばれる手法も有効です。テーマやモチーフなどを出し合ってグルーピングすることで、ひとりでは見えてこなかったアイデアが浮かび上がってくるでしょう。
09. モデルとなるものを探す
自身がデザインしたいものに近いものをモデルとして探すのも、インスピレーションを掻き立てる上で有効な方法です。
モデルとなるものを探すには、街に出かけてモチーフとなるものを探したり、他のデザイナーの作品を探して自身が作りたいものに近い作品を複数チェックする方法などがあるでしょう。ゼロベースで作品を作ろうとするとなかなか時間がかかってしまいますが、架け橋があればかえって時間が短縮できるでしょう。
10. 街に出かけてみる
それでもアイデアが浮かばない場合、街に出かけてみるのも一つの策として採用してみましょう。
街は、デザインされた広告やオブジェ、商品が考え抜かれて配置された店頭など、デザインアイデアの宝庫です。自分のデザインしたいジャンルと関係なくとも、様々な点で参考になることが多いでしょう。
11. チラシを集める
新聞の間に挟まっている折込チラシや、ポストに投函されているチラシをすぐに捨てていませんか? もしあなたがデザインの仕事になんらかの関わりがあるのであれば、捨てずに取っておくと、きっと役立つでしょう。
もちろんすべてのチラシのデザインが優れているわけではありません。たくさんのチラシの中から、どこか目に止まるチラシや、配色・構成が工夫されたチラシを見つけてみましょう。プロのデザイナーが制作しているチラシは、デザインの勉強をするための素材としてピッタリです。また、飲食店や学習塾、ジムなどでは使う配色・構成、写真の使い方も変わってくるので、自分の得意分野ではないジャンルのデザインをするときにも役立つでしょう。
12. 画廊に赴く
いわゆる美術作品は現代の商業デザインとは違う部類として扱われることが多いですが、インスピレーションを得るという点では大いに役立つかもしれません。
たとえば、ルノワールの『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』という作品やゴッホの『ひまわり』といった作品は知っている人も多いのではないでしょうか?こうした素朴な作品からは配色や構図を拝借することができます。
また、ちょっと奇抜なデザインにしたいなら、アンディ・ウォーホルのようなデザインを採用してもいいでしょう。彼の作品の中でもとりわけ有名な『マリリン・モンロー』と同じようなデザインにしてオマージュ化してみるのも、面白いかもしれませんね。
13. 既存のデザインを減らしてみる
21世紀になって始めて注目を集めたデザイン手法に、「ミニマリズム」というものがあります。ミニマリズムとは、ものを減らすことで余白を作り、その素朴さを良しとする手法です。インテリアデザインの世界では既に長きに渡り実積がありますが、Webデザインの世界でも2015年頃からよく見られるようになりました。
ミニマリズムの基本となる考え方は「引き算」なので、ゼロベースで作るよりも既存のデザインから差し引きを行ったほうが素早くデザインできそうです。すでにたくさんの作品がある場合には、いくつかをピックアップして、余分なパーツを取り除いてみましょう。
14. 写真を撮る
たった1枚の写真からも、壮大なインスピレーションを享受することがあります。百聞は一見に如かずといいますが、何時間も言葉で考えるより、数枚の写真を撮ったほうがかえって待望していた理想像に近づくことができるかもしれません。
一昔前であれば、一眼レフカメラのような高級な機材がなければ、いわゆる「いい写真」は撮ることができませんでした。しかし今日では、スマートフォンの性能が非常に良いので、そのまま素材にもできます。ベストショットが見つかれば、そのままスマートフォン上でCanvaアプリを開き、写真にデコレーションしてみましょう。あっという間に欲しかったデザインが完成します。
15. 映画を観る
デザインの中でもとりわけ広告デザインなどは、静止画的な止まったデザインに分類されます。しかし、そのことが味気なく感じられるなら、映画からデザインのヒントを得るのも良いでしょう。
ほとんどすべての映画には、「ストーリー」があります。優れたストーリーは、人の心を揺さぶります。ところが、静止した媒体であっても、ストーリーを語ることはできます。
説得力のある広告やフライヤーのキャッチコピー、構図には、このストーリーテリングと呼ばれる技法が使われており、視線やセリフでストーリーを巧みに喚起させるのです。一朝一夕でこの技法が身につくわけではありませんが、映画を観ることで、ストーリーを紡ぐヒントが得られるかもしれません。
16. デザインソフトの使い方を学ぶ
昔から「形から入る」という言葉があります。この言葉は、意義や内容を十分に理解していなくとも、技法を先に身につけることで、あとからしっかり意味が理解される、という意味合いで用いられます。デザインの世界でも、形から入るのは理にかなっているのです。
Adobe PhotoshopやAdobe InDesignなどのデザイン関連のソフトウェアの使い方を学びましょう。書籍やインターネットの動画やブログなど、教材は山ほどあります。使い方を学ぶ中で、「こんなこともできるんだ!」という驚き、発見がいくつも見つかるはずです。
Canvaはこれらのツールよりもさらにシンプルなので、さまざまなデザインツールを使いこなしたからこそできる時短デザインテクニックをたくさん利用することができます。まずは、いままで使ってみたかったソフトウェアの利用方法をしっかり学んでみてはいかがでしょうか。
17. 筆を使う
デザインと画用紙やメモ帳は相性がいいですが、筆記具にペンを使っているなら、今度は筆を使ってみませんか。
筆は、筆圧によって表情が何通りにも無限に広がります。点や線でしか表現できなかったペンと違って、筆を使うことで豊かな表現になるのです。
もちろん、コンピュータ上で描くデザインにも、筆のタッチを表現したデザインを使うことで、より人間らしいデザインに仕上がります。無機質なデザインが増えるからこそ、かえって筆の素朴さは目に留まりやすくなるでしょう。
まとめ
デザインに直接つながりのあるものから、一見遠回りに見えるけれどインスピレーションが孵化しやすいものまで、デザインアイデアを生み出すのに役立つ17の方法をご紹介しました。
もちろん、この中にはすでにやってみたものも含まれているかもしれません。しかし、自分ではあまり意識したことのない突拍子もない方法のほうが、自分を非現実的な環境下に置くので、かえって普段の自分からは生まれない創造的な作品が生まれるのです。ぜひ、すぐに実践できそうなものから行動に移してみましょう。