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UXデザイナーの本当の役割とは?

UXデザイナーの本当の役割とは?

一口に「デザイナー」と言っても、IT系の求人を見るとさまざまなデザイナーがいることに気づきます。Webデザイナー、グラフィックデザイナー、UIデザイナー、UXデザイナー……。その中でも、最も役割が判然としないのがUXデザイナーではないでしょうか。

 

よく「UI/UXデザイナー」と一括りにされることが多いのですが、「UIデザイナー」と「UXデザイナー」は異なる職種です。この記事では、UXデザイナーが設計するものは何か、UXデザイナーになるにはどのようにキャリアパスを描けば良いのかを紹介します。

<目次リストを追加する領域>

デザイナーの種類

まずは、さまざまなデザイナーがどのように関係しているのか、全体像をつかみましょう。デジタルメディア自体の歴史が浅いこともあり、各デザイナーの定義は曖昧な部分もあるのですが、おおむね以下のように区分できます。

デザイナーの話なのに、上図に「データサイエンティスト」や「カスタマーサポート」、果ては「マーケター」までもが登場していることに驚かれたかもしれません。一見すると「デザイン」とはまったく関係のない職種をつなぎ合わせている職種が、実は「UXデザイナー」なのです。

UXデザイナーとは?

デザイナーという言葉を聞くと、多くの人は広告デザインやUIデザイン、つまり「ビジュアルデザイナー」を真っ先に思い浮かべるでしょう。それは間違いではありません。事実、UXデザイナーに必要な基本的スキルは、ビジュアルをデザインする能力です。

 

しかし、デザインという言葉が「設計する」という広い意味を持つように、UXデザイナーの職務はビジュアルをデザインするだけにとどまりません。UXデザイナーが設計するのは、プロダクトやサービスに接触するユーザーの体験そのものなのです。

 

ユーザーにはそれぞれ異なったバックグラウンドがあり、プロダクトに接触するきっかけやタイミングはさまざまです。ある人はマーケターが作ったチラシをきっかけにするかもしれませんし、ある人は友人の紹介でカスタマーサポートに直接問い合わせをしてくるかもしれません。プロダクトがアプリケーションならば、それをダウンロードしている時間もユーザー体験の一部です。

 

もしそれを意図的にデザインしようと思えば、プロダクト単体のデザインをするだけでは足りないことは明らかです。UIデザインは、UXデザイナーの重要な職務のひとつではありますが、全体ではありません。

 

ここまで説明してきた通り、UXデザイナーとは単一の職種というより、さまざまな職種にまたがった包括的な職種です。しかし、包括的であるからといって、すべての職種に精通している必要はありません。

 

UXデザイナーは単一の職務を極めたスペシャリストというよりも、さまざまな役割の人々をまとめ上げるジェネラリストです。UXデザイナーには自分自身が直接手を動かすよりも、プロダクトやサービスの全体をより良い方向に導くためのファシリテーターであることが求められるのです。

 

なお、ご存知の通り、UXという概念は近年唐突に登場したものではありません。古いものでは1950年代にはすでに「人間中心デザイン」という概念が発見されていますし、人間工学の分野やHCI(ヒューマン・コンピューター・インタラクション)、HCD(ヒューマンセンタード・デザイン)、あるいはデザイン思考やIA(インフォメーション・アーキテクチャ、情報設計)など、UXと類似した概念や付随して語られる概念は多くあります。

UXデザイナーになるためには

それでは、UXデザイナーになるにはどのようなキャリアパスをたどり、どのようなスキルを身に付ければいいのでしょうか?

 

本質的にUXデザイナーは包括的な職種であるため、何を強みとするかによって必要とされる能力はさまざまです。しかし、ここでは現実的なガイドとして、UXデザイナーの求人が最も多いであろう2018年現在のIT業界の状況を前提にお話しします。

UXデザイナーに必要な能力

まず、UXデザインに必要な能力について説明しましょう。『UXデザインのやさしい教本』(原題:The UX Learner's Guidebook)では4つの領域に分けて説明しています。

 

  • 認知能力:共感、解釈、想像する力
  • 知識:デザイン以外の諸分野の知識
  • デザインに対する判断力:UXデザインの実践において、経験に基づいて結論を導き出し、意思決定を行う力
  • ソフトスキル:意思疎通、協力、指導、学習、批判する力

 

UXデザイナーが主として扱うのはユーザー体験であって、プロダクト単体のビジュアルデザインや実装ではありません。しかし、そのユーザー体験自体がプロダクトを軸としていることに変わりはなく、プロダクト自体の使用感の主軸となるビジュアルデザインやその実装に対する知識・スキルを持っていれば、革新的なアイデアを見出す重要な源泉となります。

 

また、UXデザイナーはその仕事の性質上、ファシリテーターとして振る舞わなければいけない場面が多いため、チームメンバーを気遣ったり導いたりするような、マニュアル化できない力も重要となります。 

UXデザイナーになるためには

もし未経験からUXデザイナーになりたいのであれば、まずはインハウスのUI/Webデザイナーとしての力をつけましょう。

 

デザイナーは、社内のプロジェクトに携わるインハウスデザイナーと、社外のプロジェクトに携わるクライアントワーク担当のデザイナーに分けられます。UXデザインは継続的にそのプロダクトに関わることで真価を発揮しやすいため、インハウスデザイナーのほうがよりUXデザインに関わりやすいのです。

 

また、転職などを期にUXデザイナーに転身したい場合は、ポートフォリオの構成に気をつけましょう。「なに」をデザインしたのかよりも、「なぜ」デザインしたのかということが重要です。「IDEO」や 「ueno.」など、著名なデザインカンパニーのケーススタディも参考にすると良いでしょう。

 

面接では、

  • 自分の中にデザインプロセスを確立しているか
  • メンバーのファシリテーターになれる人柄か
  • ユーザーリサーチ/マーケティングに対する経験や知識はあるか
  • デザインや開発に対する理解やセンスがあるか

 

などが見られることになります。通常の業務の中でこのような力を付けられる機会が得られない場合は、裁量を持って取り組めるサイドワークを探して取り組むのも良いかもしれません。

UXデザイナーとして大切なこと

UXデザイナーとして最も大切なことは、問題のインサイト(核心)をつかむことです。

 

検索すれば、UXリサーチ方法やUXを最適化できるとされるデザインプロセス、ツールなどが簡単に見つかります。しかし、それらのツールはあくまでも問題のインサイトをつかむための補助輪にすぎません。

 

それらの既存の資産を活用することも大切ですが、自分の頭で考え、問題のインサイトをつかみ、それに対して的確なアプローチをしていくこと。それが、UXデザイナーの本来の仕事なのです。

村井泰人

インハウスデザイナーを経験後、デベロッパーとして株式会社LIG、株式会社グッドパッチに勤務。現在はフリーランスとしてUX戦略およびプロダクト開発支援を行う。